伏見ビル（登録有形文化財）
大正１２年竣工，鉄筋コンクリート造３階，設計は長田岩次郎。
当初は，ホテルとして建てられたようで，フロントや電話交換室など，所々に今もその面影が残されている。小泉事務所の入る１７号室も，当時の客室である。きらびやかさはないが，階段，窓枠，タイルどれ１つとっても趣があり，えも言われぬ「気品」を漂わせる。
現オーナーは，上村田鶴子さんであり，伏見ビルに負けず劣らず“かわいらしさ”と“気品”のあふれた淑女である。１Ｆで「ギャラリーもず」を営まれながら，伏見ビルの管理もなされている。古いものが輝き続ける重要な要素は「手入れ」であり，その「手入れ」の質を左右するのが，オーナーの「想い」である。田鶴子さんにとって伏見ビルは，自分の生活の場所そのものであり，人生の舞台とも呼べる場所なのであろう。
そして，中に入っている私たちテナントも，まさに同居する「住人」であり，「いってらっしゃい」と家族のように送り出される。
大阪有数のビジネス街の中にあって，ポツンと現れる「昭和の空間」。この心休まるお気に入りの場所で，自分の事務所を営み，伏見ビルの歴史の一ページに加われたことは，実に幸せである。そして，ここで多くの人と出会い，自分の仕事を通じて一人でも多くの人に貢献できれば，私の人生は最高である。
絵：山中 清隆 「こいずみさん」 http://blog.goo.ne.jp/kiyonamaste
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